障害者権利条約講演会
「障害者権利条約と私たちの課題」
SSA会員 K・Y
2008年 6月14日(土)、東洋大学朝霞校舎に東京大学大学院の川島聡先生を招いて行った講演「障害者権利条約と私たちの課題」について報告させていただく。
1 条約の「見取り図」
障害者の権利に関する条約(以下「条約」とする。)は、2006年12月の国連総会で採択され、20か国が批准した2008年5月に発効した。
日本政府は、2007年9月にこの条約に署名し、現在、国内法制度と条約の内容が矛盾しないかどうかの検証を行っている。これが終わると条約が批准され、国内で効力が発生するが、過去の例から考えて、条約の批准は2010年頃になるのではないかということであった。

2 条約の目的と意義
条約は障害のある人に対して新しい権利を創るのではなく、すべての人に認められている人権の保障が、障害のある人も実質的に享受できるようにすることが目的である。
また、障害のある人が受ける不利益は、社会の構造やあり方に原因があるという「障害の社会モデル」を基本とし、社会の変容を求めたことに意義がある。
3 注目したい点
川島先生の講義をお聞きした中で特に注目したいと思った点は以下のとおり。
(1) 教育に関して
条約は、教育に関して“Full Inclusion”を求めているというのが先生の見解であった。これは、単に障害のありなしで教育の場を分けないという意味ではなく、障害のある子どもには合理的な配慮がなされた上で共に学ぶ環境が必要なのだという。
このことに関しては、条約に記載されている「Persons with disabilities are not excluded from the general education system」を、現行の教育制度との関係において政府がどう解釈するかが注目されるということであった。
(2) 差別禁止法を制定するか
条約は、加盟国に障害者差別禁止法の制定を求めているわけではないが、既存の法制度を踏まえた場合に、障害のある人に対する差別を包括的に禁止する法律を制定しないと条約を批准できないと考えるか、現行の法制度を改正すれば差別が禁止されると考えるかという点についても政府の判断が注目されるとのことであった。
先生の解釈によると、条約に規定されている「合理的配慮」という概念が日本の法律にはないことから、差別禁止法を制定しないままで条約を批准することは難しいのではないか、とのことであった。ただし、その場合には条約の批准が遅れることになるという問題点も指摘された。
(3) 監視のための機関
条約第33条には条約を実施するための国内機関に関する規定があり、条約実施の促進・保護・監視のための枠組みを設けることとされている。
この規定によって、条約が正しく機能しているかどうかをチェックする仕組みが必要となるため、政府の対応に注目したいという指摘があった。
川島聡氏 Satoshi Kawashima
東京大学大学院経済学研究科特任研究員
専門:国際法・国際人権法・ディスアビリティ法
新潟大学大学院現代社会文化研究科修了:博士(法学)
全日本手をつなぐ育成会・国際活動委員会委員
日本障害フォーラム・政策委員会・権利条約小委員会委員
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~stskwsm/top.html

