テクニカルノート ver.2011-2012

このページは、釣りにまつわる様々な考察を、レイチューン上原なりにまとめてみようという意図の雑記帳です。
ユーザーから、道具の選び方、ルアーの使い方、ミノーの特徴などの質問が多く寄せられます。
あんまり偉そうに言えた柄じゃないので、僕の好みを中心に書いてみます。
製品の補足説明にもなると思います。

10年くらい前にもちょっと書いた事がありますが、10年も経てば僕もちっとは進歩しますわね(笑)
ちょこっと経験値をプラスした改訂版ということで…


道具選びは何基準? 道具選びに頭をなやませていませんか?
ルアー 要は、「いかにして釣りたいのか」ってことだと思う
ロッド スタイルが決まれば、迷う事はない
リール 同上
PEもフロロも、僕は嫌いやなー
近頃は、山奥ばかり行きますな
温泉 道程にあれば欠かせない(笑)
川の水で作ると、なんであんなに美味いんかなー

道具選びは何基準?
僕がミノーを作るときにまず最初に考えるのは、針のサイズなんです。
たとえば源流のイワナが釣りたいと考えるでしょ、そうすると、川の規模は小さいからとんでもない大物は想定しなくて良いので、35cmがアップリミットだとすると、レギュラーワイヤーの14番フック、と、こう考えるわけです。
14番を背負えるボディー、飛距離は要らないからバランスする範囲でなるべく小さなボディー、ちょっとウエイトを入れて水馴染みをよくして、あまり移動させずにアクションするようなリップセッティングに、などと妄想します。
かように、作る側からみれば道具の選択にはそれぞれ明確な計算があるわけで、どこを基準にするのかと言えば、対象魚のサイズだったり、釣り方を基準に組み立てるべきなんですね。
快適に釣ろうとか、上手くなりたいとか考えると、やはりその範囲内で趣味性や好みを反映するというのが正解でしょう。
だけど、釣りなんてものは所詮趣味に過ぎないんですから、こうじゃないとダメなんてことはぜんぜんないわけで、俺はこのメーカーのロッドにカーディナル3なのだ!でも良いわけです。
あら、言ってることが矛盾してますか?いや、これで良いんです(笑)

まぁしかし、なんでもアリとしてしまうと、書いてる意味そのものが失われてしまいますので、以下は、ややまじめに上手になりたいとか、渓流で釣りをたしなむ事に、何かもっと奥深いものを求めようとする人々の為に書きたいと思います。

ルアー(ミノー)編
釣れないルアーが使って楽しいとはもちろん言えませんが、じゃぁ釣れるからといって楽しいかというと、これは明確に「否」なわけです。
魚が釣れるミノーなら、それこそ中学生にだって簡単に作れますし、ウォブリングするミノーが「泳ぐ」というのであれば、リップを立てればたいてい泳ぐミノーは作れます。

ミノーが他の釣り方と決定的に違うのは、アングラーの意志を最も忠実にルアーに伝達できる事、だと僕は思っています。
コントローラブルな順に渓流で使うハードルアーを並べると、ミノー(クランク、シャッドも含む)、スプーン、スピナー、メタルジグ、ということになるかと思います。
どれで釣っても嬉しいには代わりありませんが、ミノーを思い通りにコントロールして釣った一尾の充足感は、代え難いものがあります。
また、最近はインジェクションミノーもたいへん優秀になり、デザインも美しく、下手なハンドメイドでは太刀打ちできないバランスを備えた名作も数多くあります。
にもかかわらず、ハンドメイドミノーを作り、尚かつ販売するというのであれば、単に釣れるものを目指すべきではないと僕は考えていて、機能やビジュアルに於いて、それらを遙かに凌ぐ領域を持っていなければならないはずだと肝に銘じています。

ウォブリングとローリング
僕は四国という山と海とため池(これは香川ですが)ばかりと言って良い地域に生まれ育ったせいで、渓流釣りのみならず、淡水、海水の区別なく、餌釣りも含めて、今もたくさん遊ばせてもらっています。
釣りの腕前は…まぁエクセレントではないかもしれないけど、そこそこやりますよ(笑)

たくさんのヒットシーンからは経験値が生まれます。
たくさんのプラグ作りからデータが蓄積されます。
そして、たどり着いたのは、フィッシュイーターの好むルアーには、ある一定の傾向があるという結論です。
リアル系ミノーを作っていながらこう言ってしまうのもなんですが、リアルだから釣れるなんてことは殆ど無いと僕は考えています。
ルアーの後ろを一定間隔を開けて追尾してくる魚などは、とっくに餌じゃないことはお見通しで、人間がアクションを加えたことでヒットに持ち込めたとしても、それは餌だと思って食いついたのではなく、人間のように手にとって確認してから食べることが出来ないから、とりあえずくわえてみて確認しているのだと思います。

だが、完全に餌と誤認してアタックしているとしか思えないシーンももちろんあります。
そんなときはガップリベリーフックにかかるか、もしくは頭から丸飲みなんてこともあります。
ここに魚の活性も加えてしまうと話がややこしくなるので、ルアーの動き限定で語りますが、いったい何がそれを分けているのか…経験値からある種の法則を類推することは可能です。

やっとウォブルとロールがここで出てくるわけです(笑)
ご承知の通り、進行方向に対して左右方向にパタパタ振る動きをウォブリングと言い、進行方向軸に沿って左右交互に回転する動きをローリングと呼んでいます。
現実には、どちらか一方の動きしか出ないミノーは殆どないんですが、どちらの動きがより強いかという尺度でタイプ分けをすることが多いようです。
では、非常に大雑把ですが、無理矢理ミノーをウォブルタイプとロールタイプに分けると、明確にボディー形状に違いが見られることがわかります。
すなはち、フラット(平面状)タイプとラウンド(円筒形)タイプです。

前者は、リップで受けた水流が、側面を一気にスッと抜けていくと同時に、反対側に大きな負圧が生じますから、復元力が強く働いて反対方向へ振れる。
当然動きの成分はウォブリング方向へ直線的に働くから、タイプ分けをするとウォブリングミノーとなる。
このタイプのミノーは、下方向へ常に強い力がかかっていないと暴れすぎて安定性を損ねるので、動きの重心付近に重めのウエイトを配置してダイナミックバランスをとってやると安定的に反復運動を得ることが出来る訳です。
特に渓流ミノーには、流れの中での安定性を確保する目的から、近年ウエイトを多めに積んだこのタイプが増えています。
カテゴリーは違いますが、バイブレーションプラグなどは、まさにこの原理に基づいて設計されています。
レイチューンの製品でいうと、フェイズタイプ2が該当します。

後者は、水流は丸いボディーの表面に沿って分散し、一方向へ力が大きく働かず、回転することでエネルギーを逃がそうとする。
結果、人間からみるとあまり動いていないように見える場合もあるけど、ボディー形状や、ワイヤーの突き出し位置の設計さえ正しければ、ウエイトを入れずとも安定した動きを得ることが出来、その慣性質量の小ささから、非常にレスポンスに優れたミノーが作れる。
僕が渓流ミノーイングを覚えたブラウニーはその代表的製品で、レイチューンではフェイズタイプ1のフローティングとサスペンド
が同じカテゴリーに属します。

じゃぁ、フローティングは丸く、シンキングは平べったく作れば良いじゃないか、というと、そればかりでは無いところがミノーメイキングの面白さなんですね。
もちろん両者の中間的形状のミノーや、目的が違う場合もありますから、どちらが良いとはならないのは当然です。
では、目的が違う、とは何を意味するのか。
たとえば、フェイズタイプ1にはシンキングバージョンが存在しますが、円筒形のボディーのミノーにウエイトを入れる意味を考えたときに、前述の、フィッシュイーターの好む動きが絡んでくるわけです。

近年、関西の波止場では、ワインド釣法というメソッドが爆発的に流行しています。
若者のみならず、おじさんもおばさんもやってます(笑)
メインの狙いは太刀魚なんですが、青物やサワラもバンバン釣れて、キビナゴの餌をつけて釣っている人の何倍もの釣果をあげているようです。
最初は何か新しい釣法が発明されたかと思いましたが、友人がやっているのを見たり、動画でルアーの動きを紹介したものを見る限り、たとえばラパラのアイスジグとか餌木とかの動きと根本的には同じですね。
更に言えば、フィッシュイーターの好む動きの核心を、ここに垣間見る事が出来るのです。

ヒットの法則
ある特定の釣りを、ずっと大切に楽しむことは素晴らしいことです。
そこには長い時間のみが醸成できる奥行きや空気感が確かに存在します。
だが同時に、道具をこしらえるには、その奥行き感を感じながらも広角な視野を持たなければならないと考えています。
異分野にこそ、マンネリや停滞を打破する突破口があると信じるからであり、事実、時には釣りに関係のない事さえも、アンテナを敏感にしていれば役に立つことが多くあります。

何を言いたいのかというと、アングラー、特にビルダーはもっともっとたくさんの釣りを経験すべきだと言うことです。
たくさんの釣りを経験して、いろんなヒットシーンを体感する事でしか、ビルダーの感性は磨かれないと僕は確信しています。
ヒラスズキを釣っていて、渓流ミノーの設計のヒントを見つける。
そうして出来たルアーは、ストリームアーマーの例を持ち出すまでもなく、革新性と面白さを持っています。
また同時に、革新的なものを作る段階で、オーソドックスなものの本当の良さを学ぶこともあります。

過去、それぞれの釣りに入れあげていた頃に作ったプラグ達は、釣ることを至上命題に製作していたので、仲間内では圧倒的釣果を叩き出すことも稀ではありませんでした。
そのころ僕が追いかけていたものは、「ルアーのどういう動きを魚は好むのか?」というテーマに尽きます。
今も、釣りに行って頭の片隅で常に考えていることは、フィールドの状況とルアーの動きの相関関係です。

何度も言いますが、魚になってみないとほんとのところはわからないし、正直、釣れはしたけど何が良かったのか判然としない事も良くあります。
ですので、ここでは魚がガップリ食いついた時のプラグは、いったいどんな動きをしていたのかという観点に絞って考察しようと思います。
ルアーが餌かどうか確かめるような消極的なバイトではなく、猛然とルアーの腹に飛びかかる釣れ方をした時のヒットシーン思い出してみると、それはパタパタと左右に振るウォブリング系の動きの時ではなく、明らかにローリング系の腹を返す動きであり、付け加えるならばそれにダート系の動きがミックスされたルアーだと言えると思います。
ロッド操作で腹を90度くらい横向きに返すような動きを与えると、いきなりスイッチが入ったように食いついたという経験が、誰しもあると思います。
更に言えば、魚が一瞬ルアーを見失うほど、一気にパッと方向転換するようなミノーには、アマゴもヒラスズキもメッキもヒラマサもバスもイチコロです。
単純な想像ですが、魚がいつでも制圧できる程度の動きであれば、彼らはもてあそぶように観察して、よくよく確信が持てるか、またはイライラした時にのみ口を使うのではないか。
しかし、腹を返すほど必死に逃げまどい、尚かつ、一瞬眼前から消え失せるほどイレギュラーな動きをされたら、逃がしてなるものか!、とばかりに野生の闘争本能に火がついてしまう、んじゃないかと僕はイメージしています。

ひとつ例をあげるならば、「鱒の森 No.7 夏号」の巻頭で記事にしていただいたサツキマス釣りですが、午後からばかり2度の釣行で、計10回のヒットがあり3尾はすぐにバレ、1尾は手元でバラし、6尾ランディングしましたが、途中、シュガーディープ70Fなんかも使いましたけど、結果的にヒットさせたのはすべて70mmフローティングミノーのトゥイッチと呼ぶにはストロークの長い、強めのジャーキングといえるメソッドによるものでした。
流心の中でも飛び出さない性能を有するミノーを、腹を見せながらパッパッと左右に切り返してやると、低層に定位していた魚までもが、突き上げるように、まさしくもんどり打って飛びかかって来ます。
そうして、活性の高い魚を先に釣ることが出来れば、同じポイントで更に追加することも可能ですが、いきなり底から探ってしまうと、次の手が無くなってしまうので、僕は必ずこの方法からトライします。
こうしてヒットさせると、浅いレンジでの出来事の一部始終を目撃することが出来て興奮ものです。
いつまでも口を開けて食らいつくヒットシーンが記憶に残ります。
この瞬間のために僕はミノーイングをやっているんだと強く思います。

ダイバーはたしかに魚の定位しているレンジに容易に送り込むことが可能ですが、魚が飛びつきたくなるほど大きくアクションを付けると、ひっくり返ってしまって、フィーディングゾーンを外すか、飛び出してしまうので、活性の高い時や、ジャストで魚の目の前でターンした時にはヒットしますが、ガーッと飛んできて頭から押さえ込むようなアグレッシブなバイトにはなかなか至りません。
もちろん、低水温などで魚の活性が極端に低く、何をやっても出てこないような時は、ダイバーやシンキングミノーをを鼻先に送り込むしか方法がありません。
今年も2度釣行しましたが、時期が合わなかったり水温が低かったりで、外道すらも釣れない状況では、フローティングミノーにはヒットせず、ヴォーグ70TROUT シンキングで、小型を1尾だけ釣ることが出来ました。

このローリング&ダートで食わせる考え方は、渓流ミノーイングのみならず、引き波の中で一瞬ミノーのバランスを崩してヒラスズキをバイトさせる、シャッドをジャークしてでバスを釣る、ジギングでショートピッチジャークで食わせる、更にワインド釣法で太刀魚を釣る場合にも敷衍することができる、あるひとつの法則だと僕は思っています。
ミノーのセッティング
長々と書いてきた要旨はなにかというと、「昨今流行のミノーは効率よく釣れるかも知れないが面白くない」ということに尽きる。
それを順序立てて説明しようと試みているのだが、結局は動画などで違いを見ていただくのが手っ取り早いのかも知れない。
しかし、それでは何がどう違うからそのような結果になるのかという「理屈」がわからないおそれがあると思うから、辛抱して書き続けよう。

左右にブルブル振れるミノーを、良く泳ぐと評する場合が多いが、それは間違いではないが本質ではない。
また、良く釣れるというだけがミノーの優劣を計る尺度ではない。
前の章では、いつも頭の片隅で考えているのは、どんな動きを魚が好むかに尽きると書きましたが、それにプラスして、ここ数年は、人間が面白いと感じるミノーの動きとはいかなるものか?と言うことを付け加えて考えるようになり、今ではどちらかというと、そちらをメインに設計することが多くなりました。
長年釣りをしてきて、魚を手にすることにはもう充分満足した今は、渓流のルアーフィッシングをゲームとして捉え直そうという気持ちがより強く働いているからです。

釣れるから良いミノーではない。
また、きれいにウォブリングするから良いミノーというわけでもない。
人が操作して面白いと感じ、そのうえ魚が良く釣れること。
これが目指すべき完成型です。

それがフローティングであろうとシンキングだろうと、目標は同じです。
具体的に言うと
1.まずストレートリトリーブでは低速から高速まで破綻なく綺麗にウォブンロールする。
2.シェイクなりトゥイッチなりの操作を与えると、軽い入力で瞬時に反応する。
3.そして、忘れられがちだが最も大切な要素、操作を止めると(トゥイッチの合間等)
 お釣りなくピタッと止まること

1.は、軽量に作れば簡単に作れますが、リップの角度が適切でないと、操作に対する反応が緩慢になることがあります。
2.は、リップを立てれば反応は良くなりますが、高速限界は下がり、確実にピタッと止められるとは限りません。
3.もまた、軽量でリップの角度が良くても、ラインアイとフックアイ、テールアイの作り出す三角形のディメンションが適切でないと達成できません。

着水から即座に立ち上がり、操作に機敏に応え、流心でピタッと止めることができ、逆引きでも美しく泳ぎ切る。
これが真に優秀なミノーだと思います。

これらを微妙に調整する感覚やテクニックは、かなり釣りをやり込んで、観察眼に優れ、観察の結果を現物に落とし込む能力が必要で、最低でも5〜6年、真剣に釣りとルアーメイクに取り組まなければ分からないと思いますし、僕自身、まだまだ試行錯誤の部分もありますが、残念なのは、これらを理解しているビルダーやテスターと呼ばれる人があまりに少ないと言うことです。

同じシンキングミノーでも、そこを理解して設計するのとそうでないのとでは大違いです。
飛距離や沈むスピードをシンキングにする理由にする人が多いですが、飛距離は渓流ミノーの場合は二の次で良いでしょう。
いざとなったらうちにはストリームアーマーがあります。
沈むスピードなんて僕にはどうでも良いことです。
そもそもミノーを沈めて釣るのを面白いと感じたことがありません。
シンキングミノーは飛距離の若干の増加と、水なじみのためのアイテムだと考えていますし、沈めたい時はスプーンやメタルジグの方が早く沈んで狙ったポイントに送り込みやすいし、操作も微妙な技量が問われるところがテクニカルで面白いと感じます。
何を隠そう僕はその昔、ハスルアー(1/8oz、1/4oz限定、1/16ozは浮いてしまうのでミノーの方が面白い)使いでもありました(笑)
メタルジグは高い堰堤上からの垂直爆撃や、足もと直下がえぐれているポイントで良く使いました。
ちなみにホプキンス1/8ozか、カストマスター1/8ozです。
今はどちらもやりませんけどね。

これらが弊社のシンキングミノーが5cmで3g前後のスペックのものが多い理由です。
いろいろやってはみましたが、これ以上の重さのミノーでは、僕の考えるダイナミックでビビッドなミノーにはなりません。
話が逸れますが、僕の妹がトヨタパッソに乗っていますが、こないだ借りて乗ったら、ミッションもエンジンも足回りも、アクセル踏んでから2秒くらいしてから車速が増し始めて、ハンドル切ってから0.5秒くらい遅れてモワーンと方向転換をはじめ、おっとっととロールして、スロットルをオフにするとヨレヨレっとお釣りが来るような代物で、僕は恐ろしくてすぐに返却しましたが、ゆっくり乗るにはふわふわと快適で、ナビやら内装やらのアメニティーはすこぶる快適に見えました。
本題に戻すと、僕は絶対にそっち方向(パッソ方向)の車には乗らないし、そういう印象を与える製品も作りたくないということです。
これからリリースする弊社製品は、恐らくますます面白さというスペックに焦点を合わせたものになって行くと思います。