| ▼ ある家の庭から、屋根よりもずっと高くそびえている木が、ハクモクレンであると気付いたのは、ようやく今年のことである。
先日、僕の家を久しぶりに友人が訪れた時、車の騒音さえもたまにしか聞こえぬ庭に、鶯の一声が落ちてきて、「夢のような環境やなぁ」と言った。
わかってはいても、馴染みすぎた周辺や、当たり前すぎる関係に、ともすれば忘れてしまっているかけがえのないものを、僕は失うことでしか意識できないのかと、自分の不明を悲しく思う。
今ここにあるものは、いつまでも無くなったりしないのだと、たかをくくってきた自分を苦々しく思う。
明日というものは、誰にでも必ず訪れるのだと、希望的観測を抱いていた自分を恥ずかしく思う。
見えぬ宝物を見落とさないように、これからは注意深く生きよう。
この次のチャンスは訪れないのだと言い聞かせて生きよう。
この花が散れば、来年は咲かぬかも知れぬと目に焼き付けよう。
その気持ちを忘れずに、幸運にも永らえることが出来れば、いつの日か暖かい風は、優しい記憶となって渡ってくるだろう。
さようならHOT SHOT。
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