2005年2月11日
今はたった一枚きりになってしまった学生時代の彼女の写真。
賀茂川のベンチで、いつも飽きることなく語り合っていた。

 ある日の新聞記事に核シェルター販売開始という記事が載っていて、僕は単純に「へ〜、欲しいな〜」などと言っていたら、彼女は「私はいらないわ、だって核を認めることになるもの」と少しいらだったふうに答えた。
「だけど現実に核は存在するんだから、どうにかして身を守らないと人類は終わっちゃうよ」と僕が反論すると、「私は死んでもかまわないわ、いいえ死ぬべきだと思うの」と、こともなげにさらりと彼女は言った。

 バスが生態系への配慮という大義名分の下で駆除されるべき対象で、ニジマスはなぜ有害外来種ではないのか?
一見混沌に思えるこの世界には、人間のこじつけの秩序など一時の変異にしか過ぎぬような揺るぎない秩序があるのではないだろうか。軽薄すぎる矛盾が逆にそんな想像を働かせる。

 彼女は「自分の資格」ということを良く口にした。
その頃の彼女の心には、それが大切なキーワードだったのだろう。
今やっと僕も自分達の心が生んだ核で死んでも仕方ないと思う。

 そこで生きてきた老人が悲しそうに僕を見つめていれば、僕はバスの命を奪おう。誰も見ていなければそっと水に返してやろう。自分の屁理屈に誰かの悲しみに勝るほどの重みなどないのだ。

洗礼を受けクリスチャンとなった彼女のようなストイックな強さが僕にはなかった。
ただひたすら信じ愛そうとしてくれた彼女には、その時の僕は悲しいほどに子供過ぎたのだ。

もったいないので自主規制フィルタ1982年 下鴨神社にて

▼最後に釣りに行ってから、はや一ヶ月が経とうとしている。
毎年毎年、冬の釣りの写真には、巨大なアオリイカとそれを誇らしげに掲げる釣友達が無邪気な笑顔で写っている。
いつもと代わり映えしない季節の繰り返しが、そんな写真達を見比べているとどれほど幸せなことであるのかが実感として心の底の方からじわじわと湧いてくる。

 生きたアジをメインラインから5cm離した枝針に鼻がけにして、その直下に傘針をつけ、60号の錘を胴付き仕掛けにして底の方で上下させていると急にエサのアジが暴れ出す。
身の危険を感じたアジの動きでアオリイカの接近を察知出来るのだ。
狡猾なイカは、釣り人に悟られないように仕掛けの上下にあわせてアジを抱き込んで、見事に100%後頭部からかじるから、ときおりイカの重みを確かめるように「聞く」ことが肝要だ。
少しでも異変を感じたら「ぐっ」と合わすのだ。2kgクラスになるとグ〜ング〜ンとその引きも半端じゃない。魚と間違えるほどだ。

 振り返ればそこには松本船長の笑顔があり、釣友の嬌声がある。
デッキではアオリイカがギョロリと大きな目でこちらを睨んでいる。
あたたかな日差しに穏やかに霞む水平線と、青い空に縁取られた日和佐千羽海崖の切り立った断崖がある。

 もう会えない友や会わなくなった人や今すぐにでも会いたい人の事を考えながら波間に揺れる自分は孤独で、だけどとっても幸福である。

CANON EOS100 17-35 RVP100 AE 八千代丸にて

サツキマスを釣りたくてどれほど川を駆けずりまわったことだろう。それほど降海型アマゴはかっこいいのだ。

 近頃飛距離重視で、激流をものともしないような良く泳ぐミノーが少なくなってしまったから、せめてハンドメイドビルダーの僕はちょっと飛ばないけど圧倒的に泳ぐミノーを…と、今年はいつにも増して思っているのだ。

 このTT70Tはファットボディーの中、本流用のミノーだ。
NBカラーに最近物足りなさを感じていたので、一昨年仏壇屋さんに一日弟子入りして学んだ金箔貼りを施した。と言っても一筋のラインだけですけどね。
実はひそかにお気に入りだったりするのだ。

OLYMPUS OM2 MACRO50mm f3.5 RVP100 開放

180mmを装着して庭に出て、ぐるりとあたりを見回した。
おせじにも風情があるとは言い難い、我が家の庭だかなんだか雑木林と境界すらはっきりしないその端っこに、一本キンカンの木が植わっている。
そちらへ向けると、ぼやけたファインダーの中に不意に黄色が浮かんだ。
僕はその黄色にレンズを向けたままピントリングを回した。
完全にボケた背景に浮かぶ実に合焦した時、その美しさに思わず僕は「わぁ!」と感嘆した。

 黄色をきれいに写すにはプラス側へ露出補正をかけるのが普通だけど、背景の暗さと葉の緑に引っ張られて±0と読んだ。完璧なピントと適正露出だった。
現像あがりのフィルムを受け取った午後は気持ちよく仕事が出来た。

CONTAX RX2 Sonnar 180mm f2.8 RVP100 開放 1/2000秒

TU'S Talk 2004.4/1〜2004.6/31

TU'S Talk 2004.1/1〜2004.3/31

TU'S Talk 〜2003.12/31

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