桜の花が咲く頃
2001年4月6日

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凪の千羽海崖

或いは魚の重みを一度も感じることなく、すごすごと帰らざるを得ない、そんな可能性すら感じさせたほど、この日、白みつつある早暁の海は凪いでいた。
わずかに日が昇れば南風が吹くという頼りない期待のみで出航を決めた僕らは、松本船長も含め、半ば諦めモードで港を後にする。

しかしこの海へ漕ぎ出せば、その風景、潮の香り、何より透明なこの海そのものの美しさに心惹かれて、魚を釣る楽しみと同じくらい僕の心は満たされてゆくので、魚を釣らせてやろうと心配る船長が思うより僕は落ち込んではいなかった。
だいいち舟に弱いたちの僕には、ヒラスズキを釣るには条件が悪いとはいえ、波が小さいというのは反面ありがたい事でもあるのだ。

『千羽海崖』と地図には記されている。
その名の通り、高いところでは200m以上におよぶほぼ垂直な崖が、日和佐(ひわさ)漁港より南へ延々何キロメートルも続いている。
人を寄せ付けない険しさと、その複雑に入りくんだ地形が豊かな魚礁となっている。
ただし、ここでヒラスズキ釣りを楽しめるのも、この海に漁で潜り続けて来た松本しんちゃん船長の、頭の中の海底マップあってこそ成立するのであって、船があるからと言っても近づくことすら出来ない天然の要塞なのである。

どうやら僕はこの海に好かれているのか、この日和佐に於けるルアー遊魚船でのヒラスズキ釣りのレコードホルダーであるらしい。一日のトータルランディング数でも、個人累積ランディング数でもぶっちぎりらしい。

「上原さんなら凪でも1匹は釣るやろ」と出航前、船長が慰めてくれていたが、今日の相棒(といってもしょっちゅう一緒だが)スミやんが一匹目をかけて、心配がどうやら杞憂であったと一安心する。

かわいらしい本日のファーストヒット

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